太陽の唄

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あまりにも暑くて太陽が落ちてきたみたい。 今日は夏の一番太陽がおでましになっている日。 うちの猫もだらんとフローリングに寝そべっている。 まだ朝だというのに、汗もダラダラかいている。 扇風機をつけても不快な暑さは相も変わらずで電気代をケチっている母さんに心の中で舌打ちをする。 ああ、ほんとに夏なんか、大きらいだ。 暑いし、気持ち悪い汗をかくし、虫も出やすいし、虫刺されもひどいし、猫もひっついてくれないし。 それでも夏は来る。 季節は巡り続けているから夏は終わり、またやってくるのだ。 夏の暑さを呪っていたら、母さんが呆れたようにこういった。 『文句ばっかりいってないで、夏のいいところを見つけなさい』 続けてこういう。 『季節があること自体が恵まれているのだから』 たしかに一理あるかもしれない。 夏は短いようで長い。 こんなふうに文句ばっかりいっていても涼しくはならないのだから。 あまりにも暑いから冷凍庫に入れてあったアイスクリームをほおばった。バテていた体にアイスクリームの冷たさがしみる。 甘さと冷たさが同居したアイスクリームを楽しめるのは夏のいいところかもしれない。 夕ごはんはトマトときゅうりがたっぷり入った夏野菜のサラダと素麺だった。夏野菜は体温を下げる効果があるから夏の夕ごはんの定番メニューである。 夏野菜や素麺が美味しいのも夏のおかげだろうか。 窓を眺めていたら、夕焼けがみえた。 ピンクと薄紫の混じった綿あめみたいな雲が夕焼けの空に浮かんでいた。 時間が経つと、だんだん深い群青色に変わっていく。 昼間はターコイズブルーの空に入道雲、夕方はピンクと薄紫の雲と空、夜は群青色に移り変わる。 空は気分屋だなぁ。 気分屋だからこそ、変化がめまぐるしくて楽しいのだけれども。 シャワーを浴びて、久しぶりにマニキュアを塗る。 サンダルを履くことが増えたから足の指に青空と同じターコイズブルーを塗っていく。 こうしたおしゃれも夏の醍醐味かもしれない。 浴衣や水着といった夏だけのおしゃれも楽しいかもしれない。 今年の夏祭りに浴衣を着ていこうか。 ダイエットを頑張ったら水着もいいかも。 そうだ、もう向日葵も咲いているのではないか。 ウォーキングは向日葵が咲いているコースにしようか。 なんだか少し楽しみになってきた。 視点を変えると、夏も悪くない。 そんなことを考えていたら太陽が沈もうとしていた。 太陽さんよ、こんにちは。 まだ見ぬ明日を照らしてくれませんか。 太陽を、光を、掴ませてくださいな。
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