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彼の本心
二人はホテルの部屋に入り、交代でシャワーを浴びてホテルのバスローブに着替えた。
一年記念で部屋も上階に取ってあり夜景もとても綺麗に見える部屋だった。
泉と直樹は夜景を見えたままにして、クイーンベットに並んで座って枕を背にして持たれた。
直樹が泉を抱き寄せて深いキスをしてから顔を離して頬を撫でながら言った。
「…ごめん、待たせたよな。…でもやっぱり泉とこうして二人きりで話したかったからな。」
「…私、あの後何話せばいいか困って…」
「そうだよな。ごめんな。」
車の中では手を繋いでほぼ無言だった。でも信号が赤の時は二人で照れながら見つめ合っていた。ホテルに着いて夕食までの時間もあまり余裕がなかったから、キスをするぐらいで、後はいつものように直樹が泉を後ろから抱きしめてテレビを見ていた。
ホテルのディナーの時もコースの料理について「おいしいね」と言うぐらいで、ほぼ見つめ合っていることが多かった。泉の顔が赤いだけでなく直樹の顔も照れていて赤かった。直樹がこんな顔をするのは初めてだった。
でも泉は直樹のサプライズは心の底から嬉しかった。バラの花束はホテルの部屋のテーブルの上に乗っている。
「泉、色々聞きたいんだろ?」
直樹は泉を抱き寄せたまま言った。
直樹が泉を見つめる顔はいつものように甘くて優しい笑顔だった。
「直樹くん、いつから私と結婚しようと思ったの?」
「…一年前のクリスマスイブに仲直りした時かな。」
「そんな前から?」泉は驚いた。
「…俺、あの一件でもう二度と泉と離れたくねえと思ったからな。この先離れない方法は結婚しかないと思った。だから帰省した時家族にも話したんだ。今付き合ってるコといずれ結婚したいって。」
「え!?」
そんなことあのご家族に言ってたの?
「やっぱり俺の親も兄貴も驚いて、それで一度どんなコか見たいから連れてこいと言われた。」
「だから夏休みに私を連れて行ったの?」
「お袋に、夏休みに入ってから『俺の結婚の意志は変わってないけど泉には何もまだ言ってない』と電話した。お袋は『とにかく連れてこい』って言ったから泉を連れていくことにしたんだ。みんな泉と接して喜んでたよ。可愛らしくて品がある上に素直な性格で先生の仕事も頑張っているお嬢さんが俺と結婚してくれたら大歓迎だって。」
だから直樹くんのご家族のみんな、あんなに私のこと歓迎してくれてたのか…。
泉はほっこりしたが、ハッとなった。
「…直樹くん、私直樹くんと結婚したいけどそれっていつ?」
まさか、明日とかじゃないよね。
「明日入籍するか。」直樹はニヤッと笑って言ったが、泉の頬にキスをして続けた。
「…冗談だよ。いや、俺も泉とは結婚したいと思ってたけどさすがにクリスマス過ぎてからの時はまだ具体的にいつとかは決めてなかったんだ。でも、4月頃坂下先生に『結婚式に呼んでくれ』と言われた話覚えているか?」
「うん…そんなことあったね。」
「泉チャンは『付き合って一年も経ってないのに』ってつれないことを言ってくれたけど、俺はその時、結婚っていつどうやって手順をふむのか何も知らねえなって気付いたな。」
…そういえば、直樹くんあの時珍しく考え事をしてた。
「それで俺、結婚するための手順とかを調べたんだ…」
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