花火大会

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「ここなんだけど…」  泉は直樹を花火会場から離れたところに連れてきた。  ここでは見えるには見えるが会場から離れてるので花火が小さくなってしか見えない。   現に人もまばらだ。  大学の時にネットで空いてるスポットを探したときにここを紹介されてたのを思い出したのだ。 「いやいいよ。ここなら落ち着いてみえるんじゃねえか?」  直樹は全然嫌がる素振りはなかった。  泉は安心した。 「座ろうぜ。何かかなり歩いた気がする」  確かに泉もかなり足が疲れていた。 「私、レジャーシート持ってきたよ」 「用意がいいな」 「遠足用だから小さいんだけど」  芝生がありシートを広げると確かに一人分だからかなり小さかった。  仕方ないので体を寄せあって座る。 「俺、やっぱりなくてもいいよ」  直樹が言ったが、 「それはダメ」  思わず泉は言った。 「ふーん」  直樹は嬉しそうに返事をした。  買っておいたビールの缶で乾杯をして、一口飲んだ。 「美味いな」 「おいしい」  その時花火が上がった。 「お、上がったな」 「綺麗…だけど、やっぱり小さいね」 「全然いいよ」  しばらく買ったものをつまみながら、二人とも無言で花火を見ていたが、 「こっちの方が楽だな」  と直樹は泉の隣で仰向けになって寝転びだした。 「たまやー」   直樹は上機嫌で呟いた。   泉も思わず、 「私も寝っ転がっていい?」と聞いた。 「どうぞ」   泉も寝転がった。   芝生が斜めになっているのでちょうど花火が斜め上に見えた。 「確かに楽だね」  泉は直樹の方を見た。 「ああ」  直樹の顔が凄く近い。  !!    泉は慌てて上を向いた。 「首、痛いだろ」  直樹は泉の肩に自分の腕を入れた。 「し、紫原先生腕えらいんじゃ…」 「別に大丈夫だよ。」 「二回目だし」と呟いた声が聞こえて泉は心臓の音が鳴り止まなくなった。   何か話さないと心臓が持たない…。 「あの…」 「ん?」 「か、彼女さんと何で別れたの?」 「……」 「い、言いたくなければいいんだけど」 「いや、そんなことないよ。やっぱり遠距離でなかなか会えなかったからな」 「別れたときへこんだよね」 「そりゃそうだけど。でも別れる半年前…その前からもちょっとずつ気持ちが離れていったからな。でも半年前のことが大きかったな。」 「半年前に何かあったの?」  泉と直樹は見つめ合った。 「俺……」  パンパバパンパン!!  花火がクライマックスになり音が益々大きくなった。  直樹は言いかけたのを止めて花火の方を見た。  泉もつられて花火を見た。  花火は連続でうち上がり綺麗に夜空を彩った。 「綺麗だな…」   直樹はそう言うと泉の肩に回した腕に力を込めた。 「うん…」   泉はぼうっとしながら返事をしたのだった。
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