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お盆休み
お盆休みに入った。
地元に帰り泉は実家で大学の友達と会うなどしてのんびり過ごしていた。
しかし直樹のことは気になっていた。
紫原先生帰省してるって言ってたけどどうしてるかな。
連絡とってみようかな。LINEぐらいならいいかな。でも今まで業務連絡ぐらいしかしたことないし…。鬱陶しいって思われたらどうしよう…。
するとスマホのLINEが鳴った。
画面を見ると、
『この間、楽しかった。』
直樹からのLINEだった。
「え?」
泉は驚いてスマホの画面を見た。
すると次に迫力のある花火の写真が送られてきた。
『俺の地元の花火大会。』
とメッセージが添えられていた。
『綺麗だね。』
泉が返事を送ると、
『また、一緒に見に行こう。』
と、返事が送られてきた。
泉はLINEのメッセージなのにドキっとした。
社交辞令かもしれないけど…。
『楽しみにしてるね。』
泉も返事を返した。
直樹のLINEは次の日も次の日も入ってきた。
だいたい入ってくるのは夜の時間で地元で過ごしている様子を書いたものであり、大した内容ではなかった。
でも泉は直樹からのLINEが気になり夜になるとスマホの画面を確認するようになった。
ある夜泉はまた何となくスマホの画面を見ていた。
いつもだとこれぐらいの時間に直樹からLINEが入ってくるが今日はない。
まあいいか。
泉は雑誌を読むことにしたがスマホが気になって集中できない。
私から送ってみようか。
別にもともと紫原先生からきてるんだから送ったっていいよね。
泉は意を決してLINEを送った。
『お盆休みももう終わっちゃうね。今、何してますか。』
変な内容じゃないよね。
泉は送った後スマホを置いてみた。
しばらく待ったが返信はない。
メッセージ取り消そうかな。
泉はLINEの画面を開いたが既読が付いていた。
あ、読まれちゃったんだ。どうしよう。
そう思った瞬間突然電話が鳴った。 「えっ。えっ」
着信を見ると直樹の名前だ。
泉はびっくりして電話に出ると、
「水瀬センセイですか?」
と雑音が酷い中、直樹ではない男の人の声がした。
「え?誰ですか?」 泉が聞くと、
「笠原でーす」「三品でーす」と、二人の男性の声がする。
「紫原センセイのお友達でーす」
と返事があった。近くで「おい、スマホ返せ」と直樹っぽい声がする。
「泉センセイは紫原センセイと同じ学校なんですか?」また、友達の声だ。
「はい」
「紫原センセイと仲良しなんですか?」
「…普通です。」
泉が答えるとどっと笑い声がした。
「紫原センセイ残念ですね」「フラれましたね」「ダサいですね」という声がする。
「おいもう返せ」直樹の声がして、 「もしもし、水瀬サン?」 直樹の声に変わった。
「はい」
するとまた「泉チャンでいいだろ」「何よそ行きの声出してんだよ」 と笑い声がする。
「うるせー」直樹が友達に言った声がして、
「ごめん。今大学の連れと飲んでて水瀬サンからきたLINE見てたら誰からきたんだってうるさくて」
「別にいいよ」
「直樹泣き落としして付き合ってもらえばいいんじゃねえか」また後ろで声がする。
「ごめん静かなところで話す。 ちょっと待ってて」
「えっ。悪いからいいよ」
と泉が言ってもガサガサと音がするだけだった。
「…もしもし」
ややあって、直樹の声がした。
「もしもし」
「ごめんさっきは」
「別に全然気にしてないよ」
「お盆いつまで休むの?」
「明日までかな」
「俺も明日にはそっちに戻る」
「そうなんだ。私はあさってから出勤かな。部活があるから」
「俺もサッカー部が始まるからあさって出勤する。」
泉の学校は前期は野球部、後期はサッカー部にかわりバスケ部は通年で活動を行っていた。
「じゃあまた学校で」
「ああ、また」 電話が切れた。
泉は早く直樹に会いたくなっていた。
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