192人が本棚に入れています
本棚に追加
旅行当日
旅行当日になった。旅行先の天気は快晴だそうだ。
泉は迎えにきた直樹の車に乗り込んだ。
今夜の夕飯は旅行先の泊まるホテルでフルコースディナーなので、いつもより更にドレスアップした。直樹もジャケットを着ている。
…直樹くん、やっぱりジャケット着ても格好いい。
泉は笑みが溢れてしまった。
「…何か気合い入ってんな。」直樹も泉の格好を見て嬉しそうだった。
運転する車の中で泉は片山先生に言われた話をした。PTAの役員の人たちに自分たちが恋人同士かと疑われた話だ。
「…片山先生の言う通り、只そう見えただけならそんなに心配することはねえだろ。」
「でも私、軽はずみだったかなって。あの時『直樹くん』って呼んでたし。」
「そんなこと言ったら俺も最近気が抜けてるからな。ちょっと用心した方がいいな。」
…昨日の宮園先生たちの前での振る舞いは大丈夫なのかな。
でも直樹くんなら何もなかったかのような顔をして火曜日学校に行くんだろうな。
だったら私が動揺しないようにしないと。
車は順調に走っていた。
泉と直樹は昨日の運動会のことをずっと話していた。
二時間半ぐらい高速道路を走って、その後しばらく下道を走っていた。すると「スカイライン」の看板が見えてきた。
山の中を通る有料道路だ。
「ここを通るってナビが言ってんな。」
直樹がスカイラインの方へ車を走らせた。
車は緩やかな山道を軽快に走っていた。
すると、山頂の手前だが素晴らしい景色が見えるところを通りかかった。車を停める駐車場もあり小さな展望台もあった。
「…すげえ景色だ。ちょっと車停めるか。」
直樹が呟いた。
「うん、私も降りてちょっと景色を見たい。」泉も言った。
車を駐車場に停めて降りたった。車は一台も停まっていなかった。
「展望台に登ってみるか。」直樹が言って二人は展望台に登った。
展望台は二階建てでベンチも置いてあった。
柵があり、そこから景色が見えるようになっていた。
柵から景色を見た。雲一つない快晴で山々が連なって見えた。遥か下の方には家々が広がり圧巻の景色だった。
「綺麗だな…。」
「何か空気も澄んでいるように感じるね。」
泉は直樹の方を見て言った。
直樹は泉に微笑んで、そっと泉の肩を抱いてそのまま優しくキスをした。
泉の頬を撫でながらいつもの優しく甘い笑顔で泉を見つめていた。
…直樹くん、いつもそうやって私を見つめてくれる。…付き合う前から、ううん、同じ学校に配属されてからずっと優しい笑顔で私の話を聞いてくれた…
…私のことそんな風に見つめてくれる人は直樹くんだけだ。
…今、同棲の話をしてみようかな。
何かこの素晴らしい景色も味方になってくれてる気がする。
泉は、決心した。
「あの、直樹くん…」
「うん?」
「私、話があるの…。」
泉は直樹を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!