同棲への提案

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同棲への提案

「…話?」直樹は驚いた顔をして続けた。 「…実は俺も泉に話があって」 「直樹くんも?」 だが、直樹は「俺は夜のディナーの時に話す」と言った。 …もしかして直樹くんも同棲のことを考えてくれていたのかも。なら、ここで話したらちょうどいいんじゃない? 「…座るか」直樹がベンチを見て言った。 二人でベンチに座った。 泉は直樹を見つめて言った。 「私、直樹くんとやっぱり同棲したいなって。」 それを聞いて直樹は「同棲…」と呟いた。 「もちろん今でも私は直樹くんといれて十分楽しいよ。でも、夏休みに期間限定で同棲してからやっぱり私は直樹くんと朝も夜も一緒にいたいって思ったの。」 直樹は真剣な顔で話を聞いている。泉は話を続けた。 「でも、一緒の学校だと同棲は無理でしょ。けど、方法が一つあって来年うちの学校学級減で一人異動しなくてはならないよね。それに手を挙げれば、同棲もできるかなって。」 「…学級減で異動…そういえば校長先生が言ってたな。」 あれ?直樹くんこの方法に気付いてなかった?じゃあ同棲の話じゃないの? …でも、話を続けよう。言い出しちゃったんだし。 「異動は、私がしようと思ってるの。決まってる先生が乗り気じゃないらしくて、今言えば代わってもらえる可能性が高いみたいで。」 直樹は無言で泉を見つめたままだった。 「…そ、そうしたら来年の4月…早くて春休みから同棲できるじゃない?…直樹くん来年もっと今より仕事が忙しくなるはずだし。私、直樹くんの傍で力になりたい。」 「…泉だって今年よりはもっと忙しくなるはずだぞ。」直樹はボソッと呟いた。 「それはそうだけど、直樹くんはもっと忙しくなるでしょ。多分来年は体育主任だし、学習会の仕事だって増えるし。だから私ドジをあまりしないでずっと一緒にいて直樹くんの支えになりたいの。」 泉は真剣に言ったが、直樹はプッと吹き出した。 「泉チャンがドジしないのは無理だろ。」 「そ、そんなことないよ。私だって来年は27歳だよ。もう少ししっかり、大人の女性として…」 泉が言い掛けると直樹は「わかった、わかった」と笑顔で泉の頭を撫でた。 「俺の来年の仕事まで心配してくれてるんだな。嬉しいよ、ありがとう。…でも、泉…」 直樹が言い掛けたが、泉はもう一つ話したいことがあった。 「あのね、私もう一つ直樹くんに伝えたいことがあって…」
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