彼の返事

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彼の返事

「同棲は…なし?」 「ああ。」 「な、直樹くん、異動は私がすればいいんだよ。直樹くんはしなくていいから…。」 「…異動か…でもどちらにせよ同棲はなしだけどな。」 「…やっぱり私と暮らすのは迷惑だから?」 泉が聞くと直樹は下を向いてため息を付いて言った。 「…そうだよな。泉が戸惑うのも無理ねえか。」 そして顔を上げて泉の顔を苦笑いをして見つめた。 次はベンチから立ち上がって景色を眺めだした。 「…直樹くん?」 「…やっぱり泉チャンは一筋縄じゃいかねえな…」 直樹はそう呟くと振り返って泉を見つめた。 「そんな心配そうな顔するなって。」 直樹は泉の前に立ち、屈んでキスをした。 そして泉を笑顔で見つめながら、 「夜に話そうと思ったんだけど…やっぱり今話そうかな。泉、ちょっと待ってて。車に行ってくる。」と言った。 「直樹くん?」 泉が声を掛けたが、直樹は走って階段を降りてしまった。 直樹はすぐに戻ってきた。 泉の隣に座ると、「これ、プレゼントだ」 と四角い紙包みを渡した。 「ありがとう…。」 泉は、戸惑いながら直樹から紙包みを受け取った。 「開けていいから。」 直樹に言われて紙包みを開けた。中から指輪ケースが出てきた。 蓋を開けると、キラキラ宝石が散りばめられた細い指輪だった。 …あれ?これ、私の誕生日プレゼント?…でも、誕生日来月だしな。それにしてはこの光り方ダイヤモンド?後リングもシルバーじゃなくてもしかしてプラチナ? 泉は、去年クリスマスプレゼントにお互いに買って今はめている右手の薬指のペアリングを見た。これはシルバーリングだからやはり光沢が全然違っていた。 泉は、直樹の顔を見た。 直樹は真剣な顔で泉を見つめていて目が合うと、両膝に手を置いて泉に頭を下げながら言った。 「泉、俺と結婚してください。」 …ケッコン? 泉は、呆然として直樹を見つめた。 直樹は、顔を上げて真剣な顔で泉を見つめている。 「…結婚って…私と?」 「…ああ。」 「本当に?」 「ああ。」 泉も直樹をしばらく真剣な顔で見つめた。 「…嬉しい。私、直樹くんと結婚したい。」 泉は、にっこり笑って直樹に言った。 「…はあ?」 直樹は呆気に取られた。 泉の両肩を掴んで、 「泉、結婚だぞ。即答しちゃっていいのかよ。」と焦ったように言った。 「だって、私も直樹くんが大好きだから結婚したい。」 泉に不思議と迷いはなかった。 直樹は顔が赤くなって、 「そ、それは嬉しい限りだけど、結婚だぞ。一生俺といるんだぞ。俺返事はいつまでも待つからゆっくり考えてくれていいんだぞ。指輪も一旦返してくれたっていいし。」と焦って言った。 「直樹くんだって、私と結婚するってことは私と一生一緒にいるんだよ。いいの?」 直樹は赤い顔のまま言った。 「言ったろ。俺はずっと長いこと泉が好きだったんだ。そんなに好きになったコは今までいなかったし、それに泉より好きになれるコはこの先誰もいねえよ。」 「だったら私だってそうだよ。直樹くんより好きになれる人はもういない。」 「もう一回言うけど、結婚するってことは一生俺しか見ちゃだめなんだぞ。一生だぞ。もしまたイケメンの先生とかが現れてもフラフラできねえぞ。」 「直樹くんより格好いい人はいないよ。」 泉は言って真っ赤になった。 直樹も赤い顔のままだ。 「そ、そっか…。本当にいいのか?…俺と結婚して。」 「はい。よろしくお願いします。」 泉は両手を膝に重ねてペコリと頭を下げた。 すると、直樹に抱きしめられた。 「ありがとう…泉…。俺、人生で一番嬉しいよ。」
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