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直樹は泉から身体を離して言った。
「…指輪はめてもいいか?」
「うん。」
直樹は泉の左手の薬指に指輪をはめた。
「…これ、細いだろ。」
「エンゲージリングでしょ?」
「いや、違うんだ。エタニティリングっていうんだ。」
「エタニティリング?」
泉は、初めて聞いた。
「…俺、最初はエンゲージリングを探しにいったんだけど種類もたくさんあるし、泉がどんなのが好きかさっぱりわからねえし。それで困っていたらお店の人が薦めてくれたんだ。
エタニティリングって、エンゲージリングのかわりで普段使いにできるんだ。俺、やっぱりエンゲージリングは泉と選びたいなと思ったしな。エンゲージリングは特別な時にしかはめねえけど、これは結婚指輪と重ねてはめて使えるぞ。」
「じゃあ直樹くん、その…この指輪はエンゲージリングと別でってこと?」
「ああ。」
「ありがとう…何か申し訳ないけど。」
「指輪なら何個でも買ってやるよ。…けど、これを渡すのはここじゃなかったんだけどな…。」
そういえば夜のディナーで話すって…
直樹は頭をかきながら続けた。
「まさか泉が同棲の話をここでし出すとは思わなかったから、本当は夜のディナーで話そうと思ってたんだ。泉が好きそうなシチュエーションもホテルの人に頼んで準備したんだけどな。」
「え?そ、そうなの?」
泉は驚いた。
直樹は苦笑いを浮かべながら、
「まあ断るのもアレだし、メインは終わっちまったけどオマケだと思って楽しみにしてろよ。」と言った。
「…ごめんなさい。」
「いや、さすが泉だ。想定外のことをするもんな。…でも、プロポーズ即答オッケーも想定外だからまあこれも結果オーライか。」
直樹は笑顔で言った。
「直樹くん…もし私が『考えさせて』の返事でも良かったの?」
「そりゃあそうだろ。俺は泉と結婚したい気持ちを伝えれたら満足だったんだから。」
泉は直樹を見つめた。
やっぱり私のことをこんなに想ってくれる人はどこを見渡しても直樹くんしかいない。
私はこんな素敵な人にプロポーズしてもらって世界一の幸せ者だ。
泉は直樹に抱きつきたかったのを我慢して言った。
「直樹くん、私色々まだ聞きたいことがたくさんあって…。」
「…そうだよな。でもこのベンチじゃあなあ…泉を思う存分触れねえし、人がいつ来るかわからねえしな。」
「車の中とか?」
「…車の中も人が気になるしな…。泉、話はホテルまで待てるか?ディナーの後まで。俺、やっぱり二人きりで落ち着いて話したい。」
「…わかった。すごく気になるけど。」
「ディナーも早い時間を選べたと思うから、とりあえずホテルに向かおう。」
二人は観光はとりあえず明日にまわして、ホテルに向かった。
夜のディナーはデザートに特別なケーキが出てきて、ホテルの人たちがピンクのバラの花束を持ってきた。バラは108本あった。
直樹が笑顔で泉に渡して泉も大喜びで受け取った。
直樹がディナーの前に既にプロポーズをしてしまったとホテルの人たちに話し、泉が恥ずかしそうに指輪をした方の手を見せると彼らも喜んで拍手をした。そしてその様子に気付いた周りのお客さんたちにも彼らは笑顔で状況を伝えてしまった。
泉と直樹はそれを聞いたレストランのお客さんたちにも「結婚おめでとう。美男美女でお似合いだよ。」と拍手喝采で祝ってもらえたのだった。
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