彼の本心

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「やっぱり、オーソドックスな手順をふむとかなり時間がかかることが分かった。結婚って大変なんだって。でも俺やっぱり家族にも職場にも祝福されて泉と結婚したいから、突然とか、準備不足は嫌だなって思った。だからプロポーズしてすぐ結婚ではねえよ。全部順調にいっても、早くて来年の春に入籍できるかなぐらいだ。」 泉は直樹に抱きついて言った。 「私もちゃんと結婚について勉強するね。直樹くん任せじゃなくて。」 直樹は愛おしそうに泉の背中に手を回して頭を撫でながら、 「プロポーズは、実は早めたんだ。」と言った。 「そうなんだ。」泉は身体を少し離して直樹の顔を見つめた。 「俺は、この学校にいる間までに泉と結婚できればいいと思っていたからプロポーズは、来年ぐらいか、早くてクリスマスイブぐらいにしようと思ってたんだけど、夏休みに帰省した後兄貴から電話がかかってきて、『お前モタモタしてると泉ちゃん、よその男に持ってかれるぞ』って言われた。」 「お兄さんに?」 「ああ。兄貴、昔自分が余裕こいてたら葉子さん、ほかの男に奪われそうになったって。葉子さんと泉…ちょっと似てるとこあるもんな。」 …確かにそんなことを言ってはおこがましいんだけど葉子さんと私、ちょっと似てるかも。ぽわんとして天然な感じが。勿論葉子さんの方がお綺麗だけど。 お兄さん「葉子、葉子」って葉子さんにベタ惚れだったしな。 …兄弟で好きになる女性のタイプが似てるのかも。 「兄貴、結局葉子さんに土下座して戻ってきてもらってプロポーズしたんだと。で、俺にも自分の二の舞になりたくなかったらさっさとしろって。」 …お兄さん、そんなこと直樹くんに言ったんだ。 直樹は泉を抱き寄せて言った。 「そうしたら、その前に学校で宮園先生にも似たようなこと言われたし、泉はお盆明けからフェロモン満開でサラリーマンを虜にし出すし、パーフェクト超人も泉に対して相変わらず要警戒だし。もともとお盆の旅行で俺も改めて泉を誰にも渡したくないって思っていたから、プロポーズを早めようと決意していた矢先に裏打ちされた感じだったな。」 「直樹くん…もしかして、夏休みに同棲してた時、プロポーズのこと決めてた?」 泉は、ハッとなった。
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