体育館倉庫

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 十分ぐらいたっただろうか。 「水瀬先生?」  倉庫に佑哉が現れた。  驚いた顔で泉を見上げている。 「どうしたの?」 「…降りれません」  泉は情けない顔で答えた。 「体育館が空いてるからどうしたかと思ったんだけど」    佑哉は半分笑いながら言った。 「備品を直そうとして…」  泉は小さい声で答えた。  佑哉は笑顔のまま「どうしてほしい?」と聞いた。 「降ろして欲しいです…」 「だよね」  佑哉は笑顔ではいと両手を広げた。 「えっ」  泉はビックリして固まってしまった。 「受けとめてあげるから、大丈夫」 「それは困ります」 「大丈夫」  佑哉は笑顔のままだ。 「早くしないと他の人もきちゃうよ。」 それは困る。  泉は意を決して飛び降りた。 「ととっっ」  佑哉は泉を受けとめて重心が後ろになったが何とか踏ん張って泉を受け止めた 「お帰り」   泉を抱き締めたまま言った。 「…すみません」  泉は真っ赤になって慌てて佑哉から離れた。  佑哉は泉の頭をポンポンと撫でて、 「水瀬先生は、おっちょこちょいなんだな」 と笑いながら言った。 「あの、みんなには…」 「いいよ。言わないよ。」  「体育館の戸締まり頼むよ」と言って佑哉は出て行った。  泉は胸のドキドキが止まらなかった。  体育館の戸締まりをしているところで直樹が来た。  泉の顔を見て訝しげに「何かあった?」と聞いた。  泉が「べ、別に」と言うと「ふーん」と言って「顔が赤いぞ」と続けた。その後「水瀬サンさあ…」と言い掛けたが「やっぱいい」と言って泉の頭を一押しして行ってしまった。  紫原先生 変なの…。  泉はそう思ったが、佑哉との出来事の方が強烈すぎて気にならなかった。
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