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元カレ
体育館の倉庫の一件から泉は以前よりずっと佑哉のことが気になるようになった。
泉は採用一年目に受ける研修で、中学校の先生である杉崎浩一と同じグループになり、彼に親しく声を掛けられて付き合うことになった。
しかし小学校も中学校も仕事は多忙である。ただ小学校は休日に部活があるのは大会の時ぐらいだが、中学校は土日も部活の練習は当たり前にあった。浩一は当然部活の顧問を担当していた。
泉は彼のペースに合わせて会う時間を作っていたが、付き合って半年ぐらいから段々その努力をすることがツラくなってきた。
一番の理由は子どもの指導につまずいたり、仕事で嫌なことがあったりしても彼に余裕がないので話をキチンと聞いてもらうことができず、気まずくなることが多くなったことだ。
会うことが減り、連絡も減り、会ってもだんだん険悪になることが多くなり泉から別れを提案した。
浩一もあっさり別れを受け入れた。
二年目を半年も過ぎた頃だ。二年目の終わりに泉は自宅を出ることにした。気分も変えたかったし、自宅から職場は市内の割に通勤に一時間近くかかった。
仕事も忙しく一人暮らしも慣れなくて、泉は当分新しい彼が欲しいとは思っていなかった。だから同じ職場に気になる人ができるとは思っていなかった。
しかし佑哉とは担任している学年が違う。泉の学校は中規模校で、一学年に三、四クラスある。授業が終わった後は基本同じ学年の先生と話す。佑哉とバスケ部では一緒だが、個人的に話す機会は殆どない。
中山彩也香は佑哉と同じ六年生の担任なのでよく話している姿を見る。羨ましかったがどうすることもできなかった。
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