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「彼女って、先生?」
「前の学校で一緒だった」
「へーっ。何年目の子なんですか?」
「同じ、同期かな」
二人は泉の様子には気付かず話を進める。
「七年目かー。ならそろそろ結婚も考えてるとか?」
彩也香が無邪気に聞いた。
佑哉は照れながら、
「まあ、全くないって訳じゃ…」 と答えた。
泉は目の前にある生ビールを一気飲みした。
「水瀬サン。どうした?」
直樹が驚いた様子で聞いた。
「一学期終わって飲みたくなったの!」
泉は思わず大きな声を出した。
佑哉と彩也香も驚いている。
「ちょっと無茶しないでよ」
「水瀬先生、お酒強いの?」
「強いです!」
泉はそう言い放った。
もうこうなったら飲むしかない。
泉はそう決めた。
「言わんこっちゃない」
泉は隣の席の彩也香にほっぺをペチペチ叩かれていた。彩也香に持たれ掛かって寝てしまっている。
「いつもこう?」
佑哉が聞いた。
「そんなことないんだけどね。お酒もそんなに弱くないし。どうしたんだろ」
彩也香も不思議そうに答えた。
「お開きにしようか」
隣の席の先生たちも泉の様子を見て言った。 確かにもうすぐ12時になる。
「そうですね」
「おーい水瀬、帰るよ」
彩也香は強引に泉を揺さぶった。
「は~い」
何とか目を開けた泉はボケボケである。
彩也香が泉をかかえて店の外に出た。他の先生が気を利かしてタクシーを呼んでくれた。
「ちょっと紫原先生、あんた水瀬先生と家の方向一緒でしょ。この子一人じゃ危ないから。一緒に乗ってってあげて」
「えーっ」
たまたま側にいた直樹は嫌そうな声を出した。
「同期のよしみで面倒みなさい」
彩也香は止まっているタクシーの後の席に泉を押し込み、直樹を無理やり隣に乗せた。
「行ってください」
ドアが閉まり窓の外は先生たちが笑顔で手を振っている。
「そりゃないよな…」
直樹は困って泉の顔を見た。
フワフワする…
隣で誰か何か言ってるけどよくわからない。
泉はそこから記憶をなくした。
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