仮想の国のアリス

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「駄目だ、見つからん!」  竜宮城から戻った道下と、白亜紀の密林から戻った江見は再び落ち合っていた。 「応援を呼ぶか」 「待ってください。彼女の人格が残っていることを公表するのは、まだ……」  江見が切羽詰まった表情になる。道下はウサギのひげをひくつかせた。 「公表してまずいことがあるか?」 「会社の心配をしてるわけじゃありません。ただ、早川さんの存在が明らかになったら、いろんな立場の人が意見するでしょう。の決定権が、彼女の手から離れてしまう」 「……わかったよ」  道下はため息をついた。決定権の有無にかかわらず、アリスの選択肢がそう多くないことは二人とも承知していた。 「じゃあ、早く見つけよう。もたもたしてたら外の連中が不審に思う」 「はい」  二匹のウサギは目の前の空間にマップを出現させ、次の探索場所を確認しようとした。そのとき、マップ上にポップアップメッセージが現れた。 『四季のお花畑で待つ』 「これは……」  二匹は顔を見合わせた。 「果たし状みたいな文面だな。どうする?」 「行きましょう」  即答する江見に、道下は前脚(うで)を組んだ。 「今の彼女は、パークとほぼ一体化している。俺たちを強制退場させるつもりかもしれん」 「でも、早川さんを無理やりシミュレータから切り離すわけにはいきません! まずは話をしてからでないと」  道下はため息をついた。 「まあ、そうだな」
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