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キノコかタケノコか迷ったんだよ
俺は今、モーレツに後悔している。
状況説明をすると、先輩の知り合いの山に、タケノコ狩り来ていた。
タケノコってあれだろ?
めっちゃ早く朝から掘りに行かないとダメな奴。
朝早く起きれないからって、徹夜明けの身体で先輩の車に揺られてやって来た竹林。
残業のヘロヘロの体力のまま、山を登っていたわけなんだが、気がつくと先輩たちと離れてしまった。
ヤバい。
これは道に迷ったのか。
見渡す限りの、竹・竹・竹。
とりあえず元来た道を戻るか。
って、もうどこだかわからないんだけどっ!
落ち着け。とにかく、下りるか。
幸い陽はまだ明るいし、最悪スマホで連絡すれば大丈夫だろう。
そんな感じで内心ドキドキしながらも、山を歩いていると開けた場所に辿り着いた。
確かこの山、私有地って聞いたんだけどな。
小屋?
どちらかというと一軒茶屋の風格で、もしかしたら所有者の休憩所なのかと思ったわけだ。
人の気配も感じなかったので、外に設置されている縁台に腰を落とした。
とりあえず気分を落ち着かせるか。
ついでにサボっちまおう。
そう思っていたのに――。
「あれお客さん?」
突然声を掛けられて振り返ると、お団子頭の女の子がにっこりと話しかけてきた。
チャイナ服の上にフードのついた上着。オリジナルの服装の着方をして、ちょっと不思議な雰囲気を醸し出している。
ここってやっぱり店なのか?
「お兄サン、開店第一号のお客さんなんだよね。もしよかったらお父ちゃんの自慢の料理食べていってください。あ、もちろん開店記念でタダで大丈夫ですから」
料理とタダの言葉に途端に俺の腹はグー(OK)と鳴る。
朝から何も食べてなかったし、正直、なんでもいいから口に入れたかった。
「本当にタダ? だったらごちそうになろうかな」
「もちろんですよ。どうぞどうぞ♪」
俺は娘さんの言葉にホイホイとつられ、店に足を踏み入れた。
娘さんの服装からして、中華料理系なのだろうか。
とにかく何でもいいや。
「お父ちゃん、お客さん第一号だよ!」
「おう、いらっしゃい!」
野太い声と巨漢の大男に一瞬、鬼かと思った。
おい、もしかして、どこかの注文の多い料理店みたいに、俺が食材とか言わないだろうな。
「兄ちゃん、今日は特別サービスだ。好きなの注文してくれ」
「え、あーじゃあ」
どうしようっかな。
とりあえず手軽にパパっと食べられるものでいいか。
「チャーハンで」
つまんねー人間なんて思わないでくれよ。
ほら、ここの店の味ランクが分からないんだから、とりあえず無難にな。
「あいよっ!」
慣れた手つきで、あっという間に眼の前に置かれたのは大盛りのチャーハンだ。
おいおい、何人分あるんだよ。
軽く三人前はあるじゃねぇか。
俺はフードファイターじゃねぇよ。
「お父ちゃん、料理が残ると悲しむんだよね」
めっちゃ残すなと釘を刺されるんだが……。
朝から食べられる量じゃないが、とりあえず一口。
うっ! これは……。
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