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 次の日。  僕と犬は、朝からずっとベンチに座っていた。  公園には人がポツポツといる。  遊具で遊ぶ子供と、ベンチに腰掛けるお爺さん。  おそらく、後者のほうが多かったと思う。  そんな様子を、僕は遠くから眺めている。  子供たちと一緒に遊びたい、とは思わなかったようだ。  そんなことより、僕は、お腹が減って仕方なかった。  でも、どうすればいいのかわからない。  空腹と格闘し続け、ついに夕方になってしまった。  その頃には、お腹が減ったを通り越して、お腹が痛い状態になっていた。  ベンチで横になる。  犬は、地面にうつ伏せになって寝ている。  そうしていると、お爺さんが僕に話しかけてきた。  そのお爺さんは、髭が生えていて、くたびれた帽子を被っており、髪の毛が白かった。  言葉を知らない僕は、お爺さんがなんと言っているのかわからない。  言葉が通じないことがわかると、お爺さんは、ビニール袋に手を突っ込み、肉まんのような物を取り出し、僕に与えてくれた。  僕は、無我夢中でそれを食べた。  一瞬で完食。  お爺さんは、犬にも肉まんを与えた。  犬もガツガツと食べ始めた。  その様子を見届けたお爺さんは、その場を去ろうとした。  僕は、そのお爺さんの後ろを歩いた。  この人についていけば、美味しい物が食べられる。  たぶん、僕はそんなふうに考えたはず。  振り返ったお爺さんは、僕に何か言う。  当然、僕には聞き取れない。  後ろを振り返ると、犬もついてきていた。  お爺さんは溜め息をついた。  明らかに迷惑そうだった。  今の僕なら、走って振り切ってしまうだろう。  しかし、そのお爺さんは、ニッコリと微笑むと、僕の頭を撫でた。  そのお爺さんの表情と、撫でることの意味は、当時の僕にはよくわからなかったが、なんとなく、敵か味方かの区別はできた。
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