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4
しばらく経つと、少しずつ肌寒くなってきた。
公園を利用する人も、だんだんと減っていく。
そんななか、僕たちの生活は、なにひとつ変わらなかった。
朝から晩まで、黙々と砂遊び。
この頃になると、僕は、砂でなにか形を作ることに楽しさを見出すようになった。
犬、人の顔、滑り台、虫など、さまざまな形を砂で表現する。
一度だけ、お爺さんと協力して形を作ろうとしたことがある。
しかし、お爺さんは、削ってほしくないところの砂を削ったり、予定外の場所に砂を盛ったりするので、僕は腹が立ち、作りかけの砂を蹴っ飛ばしてしまった。
それ以来、お互いに相手の砂遊びに干渉しないことが、暗黙の了解となっている。
ある日、お爺さんが倒れた。
それは、本当に突然のことだった。
なんの予兆もなく、倒れ、動かなくなった。
僕は、お爺さんに近づき、様子を伺った。
いちおう、まだ生きているようだった。
しかし、僕は、どうすればいいのかわからなかった。
お爺さんは、非常に苦しそうだった。
それは、当時の僕でも、なんとなくわかった。
公園は静かだった。
僕たちのほかには、誰もいない。
ただ、
時間だけが過ぎていき、
気がつくと、
お爺さんの表情は、
安らかなものとなっていた。
僕は、
泣くこともなく、
悲しくもなく、
寂しい、と思うこともなかった。
そのとき、僕はどういった感情を抱いたのだろう。
たぶん、なにも感じなかったと思う。
よくわからなかった。
本当に、それだけ。
僕は犬の頭を撫でた。
犬は、僕を見ている。
僕は犬を連れて、誰もいなくなった公園を出た。
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