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 しばらく経つと、少しずつ肌寒くなってきた。  公園を利用する人も、だんだんと減っていく。  そんななか、僕たちの生活は、なにひとつ変わらなかった。  朝から晩まで、黙々と砂遊び。  この頃になると、僕は、砂でなにか形を作ることに楽しさを見出すようになった。  犬、人の顔、滑り台、虫など、さまざまな形を砂で表現する。  一度だけ、お爺さんと協力して形を作ろうとしたことがある。  しかし、お爺さんは、削ってほしくないところの砂を削ったり、予定外の場所に砂を盛ったりするので、僕は腹が立ち、作りかけの砂を蹴っ飛ばしてしまった。  それ以来、お互いに相手の砂遊びに干渉しないことが、暗黙の了解となっている。  ある日、お爺さんが倒れた。  それは、本当に突然のことだった。  なんの予兆もなく、倒れ、動かなくなった。  僕は、お爺さんに近づき、様子を伺った。  いちおう、まだ生きているようだった。  しかし、僕は、どうすればいいのかわからなかった。  お爺さんは、非常に苦しそうだった。  それは、当時の僕でも、なんとなくわかった。  公園は静かだった。  僕たちのほかには、誰もいない。  ただ、  時間だけが過ぎていき、  気がつくと、  お爺さんの表情は、  安らかなものとなっていた。  僕は、  泣くこともなく、  悲しくもなく、  寂しい、と思うこともなかった。  そのとき、僕はどういった感情を抱いたのだろう。  たぶん、なにも感じなかったと思う。  よくわからなかった。  本当に、それだけ。  僕は犬の頭を撫でた。  犬は、僕を見ている。  僕は犬を連れて、誰もいなくなった公園を出た。 
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