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ゴールデンウィーク明け一発目の授業も終わりに差しかかった頃、白井先生が答案用紙の束を取り出した。
幸運なことに高校三年間、現代文の授業はずっと白井先生が担当だ。
「前回行った、四字熟語の小テストを返す。名前を呼ばれた者から前に取りに来るように」
凜とした声に聞き入りそうになったのもつかの間、すぐにじりじりとした焦りが腹の底から迫り上がってくる。
クラスメイトが次々と名前を呼ばれていく中、それはどんどん大きくなって、ついに自分の名前が呼ばれた時。白井先生の元へ行くという緊張も相まって、私の鼓動はずいぶんと激しく鳴っていた。
白井先生は取りに来た私を一瞥した後、そっと答案用紙を差し出す。
「どうした? 珍しいな」
白井先生の怪訝そうな眼差しと赤文字の点数を見た途端、ヒヤッと肝が冷えた。50点満点の小テストとはいえ、18点。ある程度覚悟はしていたものの、やはりショックは大きい。
「次はいけるか? 難しそうなら今日の放課後、時間を取るが」
何も言葉を返せなかった私だけど、その白井先生の言葉にパッと顔を上げた。
「え、いいんですか?」
小さな声で返すと、白井先生は少しも表情を変えずにうなずく。
「ああ、別に構わない。このまま放っておく方が問題だろう」
「じゃあ、お願いします」
「わかった。放課後、職員室に来てくれ」
返事した後、18点の答案用紙を胸に抱きしめながら席に戻る。それが返される前よりも、私の胸はドキドキしていた。
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