なんか、おかしい?

4/54
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
 私にとっての運命のチャイムが鳴り、ホームルームはいつも以上に短く感じて、放課後が訪れた。  まだ席に座りながらのろのろと帰り支度する私の周りを通って、クラスメイトたちが教室を出ていく。その教室のざわめきよりも大きく、私の心臓は絶えず鳴り響いていた。  深呼吸を一つして、いざ立ち上がる。  さあ、行くぞ!  小さな鏡をのぞき込み、手ぐしで髪を整えてから私は一歩踏み出した。  廊下には窓から日差しが降り注がれている。見上げれば、雲ひとつないいい天気だ。  しかし、今の私には日向(ひなた)ぼっこをしている余裕はなく足早に通りすぎる。  こんなにうれしいことってめったにないはずなのに今、逃げ出したいくらい気持ちがそわそわしてしまっている。  そろりと押しても、職員室の引き戸はギギギッと大きな音を立てて開く。 「失礼します」   職員室を訪れるのはいつだって少し緊張する。でも、今日の心拍数は段違いに速い。  もちろん白井先生の席の場所は把握している。窓際の奥に目をやれば、すぐに先生の姿が目に飛び込んできた。  つい見とれてしまいぼさっと突っ立っていた私だけど、そばを他学年の先生が行き交い慌てて歩みを進める。もうどうやって呼吸しているのかもわからないくらいの心地で。 「先生」 「ああ、来たか」  白井先生は何やら業務日誌のようなものを書いていた。小さく呼ぶと顔を上げ、やはりポーカーフェイスでペンを置く。 「隣の相談室が空いている。そこで」  手短に言って、白井先生が席を立つ。そのまま廊下に出ていく先生の後を追った。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!