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相談室に入ると、白井先生が照明をつけて窓を開け、私に適当に座るよう指示する。
相談室は会議室のように、中央に長机が長方形に並ぶ細長い部屋だ。
私はその長机の下に収まっていたパイプ椅子をひとつ適当に引いて座った。白井先生もちょうど私のななめ前に位置する椅子に同じように腰かける。その距離、わずか数メートル。
先程までとは打って変わって、静かな室内。遠くからはグラウンドや廊下の喧騒が聞こえてくる。また、自分の心音が一際大きくなって響いているように感じられた。
一呼吸置くと、白井先生の瞳が私を向く。目が合って、私の胸の奥が甘く鳴る。
「それで、何があった?」
「何がって?」
思いがけない質問に、答案用紙やら筆箱を取り出す手を思わず止めた。
「体調でも悪かったのか? だいたいいつも満点だろう、三杉」
「い、いつもってわけでは!」
白井先生が担当する現代文だ。当然、私は一番気合いを入れて勉強していた。それにもともと、現代文は得意教科でもある。
「間違えても一つか、二つ。それが今回は正解の数を数えた方が早い」
白井先生の鋭い眼差しを受けて、私はおずおずと口を開く。
本当はあまり理由を言いたくなかった。
「知らなかったんです、小テストがあるって」
「えっ」
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