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白井先生はきっと、私の不調の原因を知りたかったのだろう。だから、こうして時間を取ってくれた。
それがわかった今、先生はもう切り上げようとしているのは明らかだった。
「今回の小テストはこちら側のミスだ。成績は考慮しておくから気にしなくていい」
それは素直に助かる。現代文は一年の頃から本当に頑張ってきたから。だけど――。
「せ、先生! それなら、一つお願いがあります」
「なんだ?」
「もう一度、小テストをしてくれませんか? ちゃんとテストを受けたいです」
私のお願いという名の提案に、白井先生は珍しく目を少々見開いた。
「そうするか?」
「はい。もし先生のお手間でなければ」
「いや、それは構わないが」
「ありがとうございます」
せっかく考慮すると言ってくれているのだ。わざわざ自ら成績を落とすリスクを高めなくてもいいのに。
だけど、私にはそれよりも白井先生ともっと一緒にいられることの方が重要だった。
再小テストは、一週間後の放課後に行われることになった。
改めて教えてもらった範囲のページを、私は大事な手紙のように何度も見返した。
いつもと変わらない現代文の授業だって、私にとっては少し特別に見える。
「というわけで、この評論の構成はこのようになっている。著者が言いたいのは……」
評論文の読解について解説している白井先生を見つめながら思う。
今までなら、同じ教室の中で週に何度も会う関係であっても、先生のことをうんと遠くに感じていた。だけど、今は――。
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