なんか、おかしい?

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 たとえそれがテストであれ二人だけの約束があると思うと、ぐっと親密になれたように勘違いできた。  そう、勘違いだと自分でもよくわかっている。それでも白井先生とまた放課後、二人きりで会えることが何よりうれしくて、ただドキドキしていた。  ダメだ、気持ちが浮ついてしまっている。もっとちゃんと授業を聞こうと私が気を引き締めた時。  クラスでも一際目立つ金谷(かなや)さんという女子が、同じく派手な容姿の岩倉(いわくら)くんという男子の背中をつついたのが見えた。金谷さんと岩倉くんの席はちょうど教室の真ん中辺りで前後だ。 「ねえ、白井に聞いてよ」 「は? 無理だって。んなもん、面と向かって聞けるかよ」  本人たちはひそひそと小声で話しているつもりだろうけど、窓際の後方に座る私のところまでその内容は漏れ聞こえてきた。 「そこ、私語を慎みなさい」  冷静なトーンで白井先生が注意した途端、二人の声はピタリと止まった。  休み時間になって白井先生が教室を出ていくと、また金谷さんと岩倉くんの会話が聞こえてくる。二人とも声が大きい。 「ちょっと金谷、ああいうのマジで勘弁してくれよ。白井の授業中にしゃべるなんて無理だって」 「だって、個人的に訊きに行くより授業中に訊いた方がまだマシじゃん。それか、今から追いかけて訊きに行く?」 「無理、マジ無理! あの白井に『昨日、腕組んでた人と付き合ってんの?』なんて訊けねぇよ」
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