一人遊び

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一人遊び

「……はぁっ……っ……」  ベッドの上に腰かけて、一人が、マスかいている。  この場合の一人と言うのは田村一人(かずと)と言う少年を指す。人数ではない。  田村一人はどこにでも居るような平凡な少年だ。取り立てて美少年という訳でもないし二目と見られない不細工と言う訳でもない。  中肉中背。170cmちょっとの身長と60kgくらいの体重。勉強も運動も程よく苦手で、通知表には3ばかりが並ぶ。テストの成績はちょうどクラスの中間くらい。  出席番号も43人中22番。あえて言うなら、あまりにも中間的である事が一人の特徴だった。  ただし色恋沙汰には縁がない方で、今の所恋人も居ない。しかたなく、こうして一人寂しく自分を慰めている訳で。 「……ぅっ……」  大きく開いた姿勢の膝が強張る。呼吸は荒く、頬は紅潮して。指先は徐々にスピードを増した。もうすっかり先走りの露に濡れる息子を、夢中で擦り上げる。  この所試験勉強で忙しく、もう一週間以上溜め込んだままでいる。  若いとはいえ、さすがに触れただけでイクと言う事はないが、先端は嬉しそうにぴくぴく震えている。  もう少し。もうちょっと。後一押し。 「ん……っ」  射精への期待に背筋をゾクゾクさせて、いざ、ティシュ箱を引き寄せた瞬間。 「……動くなっ!」  めりっ。バターンッ。ドアの鍵をぶっこわして、誰かが部屋に入ってきた。  それは、映画にでも出てきそうな黒ずくめの男。スーツ、ネクタイ、靴、サングラス、クルーカットにした髪。全てが黒い。ただワイシャツと肌の色だけが白くて。耳にはご丁寧に無線機のイヤホンらしき物を挿している。  彫りが深めの顔立ちはごつくて、東洋系のようでもあるが、確実に白色人種も混じっている。絵に描いたような軍人タイプ。 「田村一人、君は3時間前に時空軸特別保護指定注意人物に認定された! よって君の身柄を我々保護局が監理するっ!」  黒ずくめの男はそれを一息で言い切った。一度も噛まなかった。
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