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安倍聡明くんはスマホが使えない
僕は怒っていた。
あいつのことを思い出すと筆が震えて狙いが定まらない。
感情が荒立っていると良い文字が書けないのだ。
僕はいったん筆を横に置いて深呼吸をした。
目を閉じて雑念を頭から取り除く。
意識が澄み渡ったところで再び筆を手に取る。
筆に墨を含ませ、紙の上に持っていく。
意識が筆の先まで行き届いている。
よし、今度こそ行けそうだ。
ゆっくりと半紙に筆を下ろそうとした時だった。
「聡明くん! 出た、出た、出ました! 妖魔です!」
書道室のドアが荒々しく開かれ、クラスメイトの{芦屋道満子|あしやみちみつこ}が入ってきた。
自称、校内のトラブルシューターだ。
でも僕にとってはトラブルメーカーだ。
「うるさい! 君のせいで書き損じたじゃないか」
「また書道なんてやってるんですか? 他に誰もいない部活で? それよりも今は妖魔ですよ。あれ、それとも怪異だっけ? ともかく聡明くんは学校の友達が驚異に晒されてるのに平気なんですか?」
「一つ。学校の知り合いが友達とは限らない」
「うわ、ドライですね」
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