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式神は陰陽師にとって大切な商売道具の一つだ。悔しいのはコピーした式神がちゃんと動いたことだった。「へー、式神って紙だからコピーで増やせるんですね」と芦屋道満子はヘラヘラと笑っていたが、そもそもそのような行為そのものが度し難い。
僕が思い出してムカムカしてると、芦屋道満子はフォローするように言った。
「まあ、人には得手不得手ってものがありますからね。ライン交換はまたの機会でいいですよ。とりあえず今日はわたしのスマホで確かめてください」
芦屋道満子はスマホの画面を僕に見せてきた。動画が再生される。場所は僕らのクラスの一年A組で、クラスメイトの十和田タダシが映っていた。普段は温厚なはずの彼は、一人で地団駄を踏みながら悪態をついている。
「何か様子がおかしいな」
カメラが回り込み、十和田の顔が映った。一瞬だけ額に小さな目が開いているのを僕は見逃さなかった。
「オニノメだ。取り憑かれると目に映るものすべてに嫌気が刺し、怒りっぽくなるんだ」
「まるで聡明くんじゃないですか」
「僕が怒りっぽくなるのは君のせいだ!」
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