安倍聡明くんはスマホが使えない

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「人のせいにしないでくださいよ。……で、十和田くんのことは助けられそうですか?」 「低級の悪霊だ。陰陽師にとってはなんてことない」 「じゃあ、書いてくれるんですね?」 「陰陽師として見なかったことにできないからね」  僕は机の上から書道用の半紙を外し、代わりに白紙の御札を取り出した。ズレないようにしっかり文鎮で固定する。硯と墨も専門の道具と入れ替える。今からするのは書道部の活動ではない。陰陽道だ。 「……って、墨を擦るところから始めるんですか?」 「墨を擦りながら気を練っているんだ。御札というのはただ字を書けばいいわけじゃない。精神を文字という形に落とし込む繊細な作業なんだ」 「もっとシュッと書いてバーンって完成させられないんですか? 十和田くんは今も妖魔に取り憑かれている最中なんですよ?」 「急いで書くと字が乱れる。そうすると御札の効果が正しく顕れない。少し黙っていてくれ。話しながらだと集中できない」  かしましい芦屋道満子も流石に黙った。怪異の類は自分では解決できないことはよくわかっているのだ。
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