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「え? そ、そんな馬鹿な。効かなかったってこと?」
「いや、だから使えなかったんですよ。教室に行ったらもう十和田くんがいなくなっていたんです」
「姿を消したってのか?」
「いいえ。vtuberの配信をパソコンで見たいから、って言って家に帰ったらしいんですよ」
「ん? つまりは御札を見せる前に逃げられたってこと?」
「もしかして悪霊に気づかれたんでしょうか?」
「いや、オニノメは低級な悪霊だから、宿主の行動を操ったりはできないはずだ。十和田本人が普通に帰りたくて帰ったんだと思う」
「怪異を放っておくとどうなりますか?」
「オニノメくらいだとただちに命に関わるようなことはないと思う。ただ、精神に負担がかかり続けることは確かだ。調伏は早いに越したことはない」
「じゃあ、十和田くんが帰る前にやるべきだったんじゃないですか」
芦屋道満子にいきなり責められて僕はイラッとした。
「まるで僕が遅かったみたいな言い方じゃないか」
「実際、一枚書くのに15分もかかってましたよね。もうちょっと短縮できませんでした?」
「時間をかけて集中しないと良い御札にならないからだよ」
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