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リードを離し、坂を駆け下りる。
すぐ先の角を左へ曲がり、次の角を右へ。
こんなに簡単に見つかるとは考えていなかった自らの甘い考えを呪いながら、歩行者用の階段を降りきった所で、初めて後ろを振り返る。
ヤツらの姿はなかった。その代わり、さっきのビーグル犬が赤いリードを引き摺りながら階段を降りてきていた。
おいおい、と俺は心の中で呟く。好いてくれたのは嬉しいが、邪魔なだけなんだよ。
そんな気持ちを他所に、足元で立ち止まった犬は、舌を出しながらハアハアと荒い呼吸を繰り返している。
「ご主人様の所へ帰れよ」と、声に出して言うが、動こうとする様子はない。
俺はため息をつくと、「お前とご主人様の間に何があったのかは知らないが、お前みたいな馬鹿犬にも、思うところがあったのか」と語りかけながら、走るのに邪魔そうなリードを外してやる。
「ついてくるのは勝手だが、何があっても知らないからな」
そう言って走り出した俺の後ろを、さも当然という足取りでついてくる足音を聞きながら、俺は少し前にネットの掲示板で読んだ都市伝説を思い出していた。
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