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5. 神社
しばらく走り続けた後、住宅街の一角にあった小さな神社に立ち寄る。
石段を上り境内へと進み、こぢんまりとした本殿の前で立ち止まる。
歩を緩めると同時に全身から噴き出す汗に、ポロシャツの襟口を掴み、パタパタと風を送りながら、水道を探す。
とにかく喉が渇いていた。
だが、本殿の周りに水道は見つからず、代わりに目に留まった鈴を見上げる。
せっかくだからお詣りでもしようかと考えたが、すぐに、神様も寝てる時間かなと思い、止めた。
ご神木の前を通り、手水舎まで参道を歩く。
水盤にされていた竹の蓋を開けると水が溜めてあった。
水に浸した指先を舐めてみる。少しぬるかったが、腐ってはいないようだった。
両手で水をすくい、口へ運ぶ。
喉を湿らせた水は、すぐに全身に染み渡っていく。
思わず大きなため息が漏れた。
もう一杯水をすくっていると、犬が足元で息を荒げながら、こちらを見上げている。
犬の鼻先へ水を溜めた両手を差し出す。
舌先で器用に飲み干した犬は、そのまま俺の掌を数度舐め、もう一杯と言わんばかりに、こちらを見上げた。
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