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「何て名前ですか?」少女が口を開く。
「知らね」
「シラネ? なんか苗字みたいな名前ですね」と、犬のお腹をさすりながら少女は笑った。
「違う違う。そうじゃなくて、知らないってこと」
「おにいさんの犬じゃないんですか?」と、さっきよりも大きな声で尋ねられ、俺は頷く。
「じゃあ誰の?」
「知らね」
「それにしては、えらくなついてますね」
「たった数十分前からの知り合いだけどな」と説明するが、「ふーん」と言った少女は、既にこの話題への興味を無くしたようだった。
「で、おにいさんはここで何をしているの?」
少女の問いに「そうだな……」と答えながら煙草を取り出した俺は、「休んでいる」と言って、煙草を咥えたが、火をつけるより先に、少女から言葉のボールが返ってきた。
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