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受付にいた女性が、劇半ばで出てきた俺を見る。
その前を走り抜け、エレベーターのボタンを押す。が、一機しかないエレベーターは直下の階から下へ降りていくところだった。
傍の非常階段の扉を開けた俺は、階段を駆け下りる。
五……四……
階段室に足音が響き、人感センサーで階段の明かりが次々と点いていく。
三……二……一
体当たりするように外扉を押し開ける。勢い余り、そのまま地面へ倒れ込んだ。
背後で鉄製の扉が大きな音をたてて閉まり、大通りからは雑踏の音が聞こえる。
畜生と毒づきながら身体を起こした俺は、ポロシャツのポケットから取り出した煙草に火をつけた。
大きく吸い込んだ煙を吐きながら、後ろを振り返る。
重く閉ざされた鉄の扉。
だが、その向こう側から近づいてくる禍々しい気配に、一息しか吸っていない吸いさしを投げ捨て、大通りへと駆け出す。
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