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3. オフィス街
人込みを抜け、とにかく人の少ない方へと地下道を走り続けた後、地上へ続く階段を一段飛ばしで駆け上がる。
そこは繁華街とは駅を挟んで反対側にあるオフィス街だった。
人気のない薄暗い歩道を走りながら、周囲にそびえ立つ高層ビル群を見上げる。
「あのてっぺんから飛び降りたら、さぞ気持ちいいだろうな」
何とはなしにそんなことを考える自分に鳥肌が立つ。
視線を落とす。足元では、街灯に照らされた俺の影が、はしゃいでいるかのように伸び縮みしていた。
人の少ない場所に来てホッとしたのか、急に空腹を感じる。
最後にちゃんとした食事をしたのは、ちょうど24時間前に食べたインドカレーだった。
そして、同じ店で一人カレーを食べていた女性を飲みに誘って入った沖縄料理屋で、俺はずっと彼女の愚痴を聞いてあげた。
「小さい頃から、ファッションデザイナーになりたかった。専門学校を出て、今の店に入ったけど、この頃はその夢から遠ざかっている感じしかしない」
アパレル関係の仕事をしているという彼女の言葉に、「大変だね」とか「そんなことないんじゃない?」と、とにかく優しい言葉をかけ、それから、彼女のアパートでセックスした。
彼女は特別美人というわけでもなかったし、体型がタイプということもなかったが、後ろから突いた時の背中の反りは綺麗だった。
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