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2.川端夫妻
「まわりがさ、やっぱりうらやましいんだよ」
川端翔は意を決したように、食後、酔いの力を借りて言ってしまった。
「なにも産まないって言ってるわけじゃないでしょ、あたしは35歳までは待って、とお願いしたはずよ。あなたもそのとき賛成してくれたじゃない、私はそれまで仕事を優先するって」妻の川端亜季は感情的になるのを抑えて言った。
「した、お願いしてた、それは認める。でも親父が癌になったり、母ちゃんがまた働きだしたから、せめて孫は早く見せてあげたいなって。この前も母ちゃんに『あたしの生きがいってなんだろうね』って寂しそうに言われたしさ。」翔は言った。
「あたしが今、大阪万博特需で、一番大事な時だってわかってるでしょ。自分の力を発揮できる最大のチャンスなの。それに親を理由に子供を作ろうなんて、神様の罰が当たるわ」亜季は怒ったような声で答えた。
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