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「私は河原亜季といいます。おなじオスなのに仲がいいなんて、笑っちゃう」亜季は言った。
「これでも弱虫なんです。人見知りだし、怖がりで。僕にしか、なつかない」
「ウチのはリュリュ。もっと弱虫かも。友達ができてよかったね、リュリュ」
「リュリュって言うんだ、かわいーなー」斎藤はごしごしと頭をなでた。
それからというもの、二人は決まった時間に公園に来た。ベンチに座っては、お互いのスマホでポメラニアンの写真や犬猫動画を見せあった。
二人で笑い転げたり、「可愛い」を連発したりしてすぐに時間が過ぎていった。
(こんなに笑ったのはいつ以来だろう・・・)亜季は思った。
*
二人の交際がスタートするまで長くはかからなかった。
「リュリュとポン太のために、僕と付き合って下さい」
斎藤の言葉に、亜季は「よろしくお願いします」と答えた。
斎藤隆は、独身で田町にある商社に勤めていると言っていた。もうすぐ課長に昇格するかもしれない、と言うので亜季は喜んだ。
休日には亜季の車で犬を遊ばせるため駒沢公園や高尾山にもいった。リュリュとポン太がいる限り、2人の会話は途切れることがなかった。
或る日、亜季が運転している時だった。
「人間はもう子孫を残すより、ワンコやニャンコで人生が満たされてしまうのかもね」
斎藤は悟ったようなことを口にした。
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