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ウルガは俺と森へ行けないことに最初はがっかりしていたが、これから行う工程について説明すると興味が湧いたようで自分も手伝うと言い出した。まあ拒む理由はないし、助手がいた方が作業が捗るので寧ろ歓迎だ。
大猪の牙、研磨石、液袋、蟻酸、丈夫な蔦、それから服や収納袋を作るための大猪の毛皮をそれぞれ並べ、準備は整った。これで腰巻きオンリーの生活も終えられる。
「よし、始めるか!」
『オッケー!』
余程楽しみなのかウルガの目はキラキラだ。
そして作業に入ろうとしたその時……。
『ウルガ、邪魔するぞ』
作業場としているこの洞穴の入り口から、あるプラチナウルフが入ってきた。
それは、群れの中で俺に良い感情を抱いていない者の筆頭、ヴァーゴだった。ヴァーゴは父キングスの弟の子、つまりウルガ達の従兄弟にあたる。ウルガ達よりも三年程早く生まれており身体も大きい。
ヴァーゴはここへウルガが入るのを見てやってきたようだ。子分も引き連れている。
『何だ、ここに居たのか人間。場所を聞き出すためにウルガを追ってきたが手間が省けた。今から俺達に付いてきてもらおうか』
『ヴァーゴ、どうしたの急に……』
ウルガは動揺を見せる。ヴァーゴが俺に向ける視線に怒りが含まれているのを感じ取ったようだ。
「大丈夫だ、ウルガ。俺もこいつらに用がある。まさかあっちから来るとは思わなかったけどな」
作業は一旦中断だ。先程までの楽しいウキウキ、ワクワク感が遮られて、俺は少し苛ついている。
前世では俺の邪魔をするやからをよく懲らしてめていたが、それを少し思い出してしまった。でも今回は懲らしめではなく、力を示して認めさせる事が目的だ。
「さぁ、さっさと出てくれ。ここを荒らされたくはないからな」
俺の態度に子分達が唸るが、それをヴァーゴが止めた。
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