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『ガキが。その威勢がいつまで持つか試してやる。来い』
ヴァーゴは洞穴から子分と共に出ていった。相当苛ついている様子ではあったが、感情のままに理性を失い暴れるということはなく、そこはさすが誇り高きウルフといったところだ。
俺はヴァーゴ達に続いて洞穴から出た。それにウルガも続いた。
向かった先は岩山の合間にある開けた場所で、戦うにはもってこいの場所である。
到着すると、ヴァーゴがその中心に佇み、後方に配下のウルフ達を控えさせていた。一切の手出し無用とも指示を出していた。
そして、俺を確認すると鋭い目付きで殺気を放った。
『俺は人間が心底憎い。汚い手を使い、多くの血族を死に追いやった野蛮な種……。そんな奴らと同じ種族である貴様をどう受け入れろというのだ』
いくら長キングスの決定でも到底納得は出来ないと叫んでいた。過去のプラチナウルフに対する人間の蛮行を考えれば、ヴァーゴの言う事は十分理解出来る。
しかし、俺も俺の目的を果たす為にはまだここを離れる訳にはいかない。それに、何よりもこの家族との縁をそう簡単に切るなんて俺には出来ない。
これからもここで過ごしていく為にも、彼らに俺の存在を納得してもらう必要がある。
「あんたの気持ちは理解している。でも、その怒りを俺に向けるのはお門違いだ。確かに殺してやりたい程腐った人間は山ほどいる。だったらそいつらをどうにかするべきだろ? ここで直ぐに理解しろと言わないが、俺はそいつらとは違う」
話し合いでは収まらないのは分かっている。
『軟弱な人間が……。だったら示してみろ、お前の資質を!』
ヴァーゴはそう言い放つと、全身に魔力を纏い戦闘態勢に入った。
凄まじい圧力を感じる。年の功だけ間違いなくウルガ達よりも実力は上。今の俺では全力を尽くさなければ幾分も持たないだろう。ならば――特性全開放で対応するのみ。
「行くぞ、ヴァーゴ!」
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