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俺は仲間と共に世界を救った。
命を懸け、力を尽くし、襲い来る幾多もの魔物とそれらを先導する強力な魔人まで打ち倒して、魔界との境界を封印することに成功した。
これはつい先程のことだ。
これらの功績は大きく、多くの称賛を浴び、王国からもたんまりと褒美が貰える筈だった。いや、そんな事よりも、心の底から楽しみにしていたのは、魔界の驚異が退けられたこの世界で、ゆっくり旅でもしながら呑気に暮らすことだった。
俺が唯一心を許したあいつと……。
しかし俺は、つい今し方まで抱いていたそんな希望とは程遠い状況に陥っていた。
「賢者レイよ。魔人をこの世界に引き入れ、世を危機的状況に陥れた罪としてお前を処刑する」
そう話すは王の側近。
目の前には国王が佇み、多くの兵士達が俺を取り囲んでいる。そして俺の動きを封じているのは、共に戦った勇者バースだ。
その顔は悪意に満ちていた。
「待ってバース! レイがそんな事をするなんて信じられない」
「そうだぜ……。あり得ねぇだろ」
他の仲間が止めに入ったが、バースがそれを遮る。
「こいつは魔人と内通していた。ここで殺らなければまた世界に危険が及ぶかもしれない」
反論したいが、封じの魔導具により声一つ出すことが叶わない。さらに抵抗しようにも勇者の魔力よって押さえつけられ、立っているのがやっとの状況だ。
万全なら対抗出来ただろうが、魔力が底を尽く今の状態ではそれも不可能。
既にバースが全快していることから察するに、俺は用意周到に嵌められたのだ。
「国王様、こやつが魔人と繋がっていた証拠がございます。さあ勇者殿……」
王の側近がそう話すと、バースは懐から小型の魔導具を取り出しそれを発動させる。すると、魔導具から音声が流れだした。録音された会話だ……。しかも、その内の一人は俺の声、もう一人は倒した魔人の声で再生されている。
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