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だが、この状態ではこちらが不利となるため、顎に一撃入れて腕を引き抜き、距離を取る。
『させるか』
「なっ!?」
しかし、間合いを取る間もなく距離を詰められ、ヴァーゴは凄まじい勢いで襲い掛かってきた。嵐の如く繰り返し放たれる爪と牙。反撃の隙もない。
「くっ……」
徐々に削られていく中、状況を打破する為に新たな特性を発動させた。
【複眼】――森で吸血ヤンマから吸収した特性だ。これより高速で飛び回るトンボの如く広範な視野と異常なまでの動体視力を得た。
周囲の動きがスローに変わる。相手の攻撃も、辺りに舞う血飛沫の一粒一粒までもがはっきりと見える。
俺は迫り来る全ての爪と牙を寸前で躱し、カウンターで拳を的確に急所へと叩き込んでいった。一気に形勢が逆転する。
『に、人間のガキが何故ここまで……』
そのまま休むことなく攻め続け、勢いでヴァーゴを更に押し込んでいく。まさか後退りさせられる状況に至るとは想像もしていなかっただろう。
『『『ヴァーゴさん!!』』』
これには子分達も声をあげた。
ヴァーゴは自身の不甲斐なさからか、増していく俺への怒りからか、眉間に深く皺を作り更に表情を険しくしていった。イライラもピークのようだ。
『舐めるなぁぁぁ!!』
そう叫ぶとヴァーゴは体に溜め込んだ魔力を爆発させ、俺を弾き飛ばした。
これにより数メートル後方に飛ばされたが上手く着地した。しかし、慣れないまま使った【複眼】の影響で目が回り、地面に手を着いてしまった。
その状態をヴァーゴは当然見逃さない。纏う魔力を炎へ変えていく。
プラチナウルフは成長に伴い魔法を扱えるようになるが、この年齢でここまでの魔力量と魔法を扱うとはさすがに驚いた。
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