【天神編】8.ずっと、「普通」じゃないのが嫌だった。怖かった。

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【天神編】8.ずっと、「普通」じゃないのが嫌だった。怖かった。

 ――ずっと、普通じゃないと言われるのが怖かった。  自分の直感が人並み以上であることは、幼いころから気づいていた。  迷子になっても絶対親の居場所はわかったし、友達が何を考えているのかなんとなく察せた。  けれどそのカンの良さが良い事ばかりではないと気づいたのは中学生になってから。  一度も遊びに行ったことのない場所で地図なしに歩き回れたり、友達の家で机のどこに何があるのか、なんとなく当ててしまったりしたときに、友達にドン引きされたり。  テストで直感に任せて書いた回答は大抵全問正解になって、結果として頑張ってる友達より簡単に上の成績を出してしまって嫌われて、絶交されてしまったり。  ピンとした閃きで動いて、過度に目立って周りに壁を作られたり。 『ずるいよね。なんでも直感でうまくいくなんて』 『陰で努力してるくせに、なんでも直感でごまかさないでよ』 『本当は地図で道を覚えてたんでしょ?』 『本当は机の中覗いたんでしょ?』  私がただ私として生きているだけで、周りに角が立つ。  直感なんていらない。私は理性的に『普通』に角を立てずに生きていきたい。  けれど勝手に浮いてしまう。  うっかり気づいてはいけない事に気づいてしまったり、ポロッと変なことを漏らしてしまったり。  なるべく「普通」であるように頑張ってきた。  けれど、うまくいかないことばかりでーー --- 「私、浮きたくないのにずーっと『変な子』って言われてきたんです。それがコンプレックスで」  帰りの車の中、私はこんなことをぽつぽつと篠崎さんに打ち明けた。
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