幸せな結末になるまでに

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幸せな結末になるまでに

 ♠︎髪を切った。 分厚かった前髪をばっさりと。 ボサボサだった髪も切り、眼鏡もコンタクトに変えた。 ここが漫画の世界なら、俺は高校生活1日目から騒がれるはず。 まぁ、ここは現実世界だからそんなことは起こらないけど。 鏡の中にはすっきりした姿の、そこそこの見た目の俺がいた。  ❤︎やっと伸びた前髪。 そこに分厚いフレームの眼鏡をかける。 整えていない後ろ髪を一つにしばる。 私はすっかり目立たなくなった自分の姿に満足していた。 ここが漫画の世界なら、私は高校初日からモブ確定だ。 まぁ、どうなるかはわからないけど。 鏡の中には清潔感はあるものの、地味を絵に描いたような私がいた。 ♠︎学校へ行くとみんなに話しかけられる。 たかが髪を切っただけでマジか⁈ 女の子達も寄ってきて、俺に話しかけてくる。 俺はすっかり混乱してしまった。 可愛い子と何を話せばいいのか、さっぱりわからない。 でもそんな中気になったのが、隣の席の子。 地味で目立たないけと、仕草が…なんていうかきれい。 俺のことは一切見ないけど。 ❤︎学校へ行ったけど、誰からも話しかけられない。 唯一話しかけてくれたのは、クラスでも目立たない子達。 うん、これでいい。 男子なんか一言も話してない。 でもそんな中気になったのが、隣の席の子。 そこそこ目立つ見た目なんだけど、なんていうか…そういう子特有の俺様オーラみたいなのがない。 私には一切興味なさそうだけど。 ♠︎隣の席の子がなぜだか気になって仕方ない。 話してみたいと思っていたら、日直という絶好の機会がきた。 ❤︎隣の席の子が気になる…。 話しかける勇気がなくて悩んでいたら、日直をやることになった。 ♠︎一緒に日直の仕事をする。 先生のミスで教室で遅くまで待たされる。 信じられないことが起こる。 一緒に帰ったら風が吹いて、彼女のヘアゴムがはずれ、前髪が上がった。 目にゴミが入った彼女が眼鏡を外したら、とんでもない美少女だった。 一目惚れだった。 ❤︎彼が優しい。 自分ではわかっていないみたいだけど、彼はとてもかっこいい。 どうしよう……好きになっちゃった。 女の子達が騒ぐ理由がわかるなぁ。  一緒に帰る時に顔を見られた。 ♠︎俺達は付き合うことになった。 お互いになぜ好きになったのかわからない。 でもお互いがお互いを求めているんだ。 ❤︎あれから気持ちがすれ違ったり、お互いのことを好きになる子達がでてきたり、彼が事故にあったり、本当に色々あった。 ♠︎❤︎そして俺と私は障害を乗り越えて結婚した。 「こんな感じはどうですか?」 真剣にたずねる男はこの漫画の作者。 「うーん、設定が月並みなんですよね…」 うなっているのは担当編集者。 「それならこことここを削って、彼が浮気をしたと勘違いした彼女が行方をくらますのはどうですか?」 「じゃあ、そうしましょう それでもう一度ネームを書いてみてもらえますか?」 2人の結婚はまだまだ先になりそうだ……。
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