曜日ごとの恋人

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曜日ごとの恋人

 月曜日 彼の好きな和食を作りながら時計を見ると、もう23時を過ぎていた。 バイトが終わるのは20時。 ここまでは20分くらいの距離だから、遅い。 「はぁ……」 ため息が出る。 またか。 彼は新しいものと、たのしいことが大好きだ。 きっと今日も、友達と飲みに行ったか、女の子と夜を過ごすんだろう。 洗濯物をたたんで、ご飯を作って…でも考えるのは彼のことばかり。 荷物をまとめて部屋を出る。 鍵を閉めてポストに入れ、振り返らずに歩き出した。  水曜日 ステーキを焼いていると、鍵が開く音がする。 「お帰りなさい」 手をふきながら出ていくと、彼の靴を脱がす。 スーツを脱がせてパジャマに着替えさせ、焼き立てのステーキとサラダ、スープを食卓に並べる。 携帯を見ながらくちゃくちゃ音を立てて食べる彼。 食べたらお風呂に入れて、寝かせる。 自分では何もできない彼。 情けなくて涙が出てくる。 次の日彼を送り出した後、私は荷物をまとめて家を出た。  金曜日 グラタンが焼けると同時に彼が帰ってきた。 「ただいま」 「お帰りなさい」 一緒に食事をして、洗い物もしてくれる。 私が一番安らげる時間。 食事が終わって、彼のお土産のケーキを食べる。 「俺さ、付き合ってる人がいるんだ」 どういうこと? いきなりの彼の告白に驚く。 じゃあ、私はどうなるの⁉︎ 「結婚したいと思ってる」 真っ直ぐに見つめられて言われる。 嫌よ。 なかなか受け入れることができない。 あなたは私を捨てるの……? 次の日の朝早く、私は彼を起こさないように荷物をまとめて家を出た。 土曜日  「毎日泊まり歩くなんて、何考えてるんだ?いい加減にしなさい!」 彼は私をいつも叱る。 「あなたはいつも怒ってるのね」 私だっていつも言われっぱなしじゃない。 今日こそは言ってやる! 「お前なぁ、息子達ももういい歳なんだから、いい加減に子離れしたらどうだ……?」 その言い方やめて。 あなたが浮気してた時に支えてくれたのは、あの子達なのよ。 子離れ子離れって、あの子達はみんなママのことが大好きなんだから……。
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