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「「馬鹿は話を聞かないな」」
口に出してから僕とエイルは顔を見合わせる。意見が合わないことよりも価値観が合うことの方が何故か気に食わなかった。
見せつけるように嫌な顔をして取っ手を掴んだ僕の右手をさらに柔らかい肌が掴む。相手が相手だと分かっているのに僕の身体は驚いて、ノブから手を離した。
「待て。何処に行く気だ」
「何処って、扉の先だが。向こうの部屋の奴らがどうなろうと僕は知ったことじゃない。時間切れで一緒に死ぬのは御免だ」
十六人が七人に減るのだからこれほど見え透いた好機は無い。再び扉を開けようとした僕の前に体を割り込ませたエイルが上目遣いで僕を見る。僕より頭一つ分小さいくせにこの女は煽るような視線を僕に絡みつけていた。
逃げるのか?まったく情けないな。と、声もなく言われてそのまま無言で去るのはプライドが許さなかった。仕方なく僕は回れ右をして状況把握に努める。
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