1/1
前へ
/28ページ
次へ

 御旗なら、さっき身を投げたらしい。ぐしゃぐしゃにひん曲がっていて、「私」は卒倒してしまったよ。  彼女ほどの作品は、そう簡単に生まれないからね。実に惜しいことをした。  やはり、電流の調整に何か誤りがあったのカモね。御旗を掲げた時、こう思ったんだ。  ――この子の為なら、御国と共に命を捨てられる、とね。  それにしても、ザンネンだ。「私」は、彼女こそ本物の人魚だと思っていた。こんなにもアッケナイ最期になってしまうとは、亡骸を捨てるのも可哀想になる。  人類の求めた叡智の結晶が、斯様にして捨てられるのは、かなしい。実に、かなしいことだ。そして、カワイイね。とっても、カワイイ。嘘じゃない。ホントウのことさ。  全部、全部、ホントウのことだった。「私」の見てきた地獄のはなし。マコトの話。  「私」はいつか話したと思うんだ。  どの星を読んでも、ワカラナイことを。どの星を選んでも正しい星の順番なんて、ワカラナイ。  あああ――ああ、あああ、虫が、虫が動きだしたぞ! しあわせだな! アッハッハッハ。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加