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「流石にやばいって。ここまできたら、警察に任せた方がいいよ。……あんた知らないだろうけど、二人が狙われたの多分、魔女の正体を探ろうとしてたからだよ。あたし、二人が話してたの聴いたもん。いい加減我慢の限界だから、教室にペットカメラでもこっそり置いてみようかって」
「だから、お仕置きされたわけか?」
「だと、思うよ。……探ろうとするやつは、今までのいじめとは比較にならないことをしてやるから覚悟しておけって、そういう警告なんだと思う。つつかない方がいいって。カメラを仕掛けるとか、張り込みするとか、そういうことは他の人がすでにやろうとして、既に失敗してるんだし。あんた、魔女を見つける手立てが他にあんの?」
「う……」
彼女の言葉は正しい。自分で言うのも空しいが、けして楓助は頭がいい方ではないのだ。魔女の正体を暴く方法も捕まえる方法も、はっきり言ってほとんど何も思いついていないというのが実情だった。しかもこの状況では、誰かに協力を依頼したら最後、仮にその人物が無実であっても巻き込まれる危険性が高いだろう。楓助自身が魔女に見つかって罰を受けることになるのは自業自得でも、協力を頼んだ人物が同じように被害を受けるのはさすがに避けたいことである。
魔女はどうやら、自分の正体を暴こうとする動きはすぐに察知するということらしい。
ならばもう方法は、察知されるよりも前に“直接とっつかまえる”しかないように思うが。
「……魔女だか何だか知らないが、相手は本当の魔法使いなんかじゃない。れっきとした人間だ。しかも、同じ中学生の可能性が高いだろ。だったら、制圧しようとしてやれないことはないはずだ」
パン、と手を叩いて、楓助は宣言する。祖父と父ほどではないが、自分も空手を習っていたしバスケで鍛えてもいる。サシで戦って勝てない相手、はそう多くはないはずだ、多分。
「結局そういう脳筋思考なわけ?……まあ、あんたの場合それが一番勝率高そうなのがなんとも言えないけど」
まったくもう、と小鳥はため息をついて言った。
「これは、話すべきか迷ってたんだけど。……あたしはやっぱり、日暮さんが怪しいと思ってるんだよね。彼女なら女の子だし、あんた一人でも勝てるかもだけど」
「おい、まだそんなこと……」
「言っておくけど、今回は根拠がないわけじゃないからね」
額に手を当てて、頭痛を覚えるような顔で。小鳥ははっきりと、楓助に告げて来たのだった。
「あたし、見ちゃったんだよ。昨日、結構暗くなってから……忘れ物取りに戻ったついでにトイレに行こうとしてさ。あのトイレから出て来たんだよね、日暮さんが。なんか怖くなって、適当に愛想笑いで話してそのまま……あたし、逃げちゃったんだけど」
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