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お? なんだ?
帰宅して玄関先に並んでいる靴の多さにビックリした。青い瞬足は、まこと君。同じくらいのサイズの黒いナイキは、さとる君か? んで、このやけにデカいコンバースは……?
なんだかほんのり汗臭いような気がするのは、気のせいか?
「ただいまー」
リビングの扉を開けると、ソファに座っていた皆がこちらを振り返った。コンバースの主は、長谷部君だったようだ。
「「「おかえりなさーい」」」
「え? 今、何時だと……」
振り仰ぐと、時計は8時を指していた。
「樹さん、おかえりなさい。皆、夕飯もお風呂も終わりましたよ?」
台所からフミさんが顔を出した。
え、いや、そういう問題じゃなくて、だな。
オレは、困惑しきりでダイニングの椅子に背負っていたビジネスリュックを置いた。
「樹兄ちゃんも、来てよ。事件なんだ!」
まこと君が真剣な顔でこちらを向いた。さとる君も頷いている。
で、長谷部君は?
目顔で聞くと、長谷部君は手にしていたタブレット端末を持ち上げた。
「凌空君は、図書館が閉まっちゃったから家で勉強してるんです」
フミさんがニコニコと笑いながら答える。
「は? なんで? まこと君たちは?」
「母ちゃん達、ノミカイ!」
さとる君が何故だか得意げに言った。フミさんの話を聞くに、息抜きにママ友同士で居酒屋に行っているらしい。
「なんだよそれ」
うちは託児所か? という後の言葉は飲み込んだ。
「ちゃんとお代はいただきましたよ。食材費くらいですけど」
オレは、キョトンとしているフミさんを台所へ引っ張っていった。皆の視線が切れたところで、声のトーンを落としてフミさんに詰め寄る。
「……オレの許可は?」
「は? 先日、OKもらいましたよね?」
「え?」
そうだったっけ……?
ここんとこ忙しかったから、オレ、フミさんの話ちゃんと聞いてなかったのか?
「田辺さんが『今年はお正月休みが無かった』んですって、って言ったら、ママ同士で新年会するなら一肌脱ぐって言ったの、樹さんじゃないですか。じゃ、病院の外来が木曜定休だから、来週の水曜日にでもどうですかって」
「え? 今日……、水曜日?」
「水曜日」
フミさんが真顔で頷く。
あれー? なんかオレ、火曜日な気がしてた。
「フミさん、樹さーん、お話中すみません。お風呂とご飯ありがとうございました。そろそろ親が帰ってくる頃なんで帰ります」
リビングから長谷部君の声がした。
「はいはーい! 気を付けて帰ってねー!」
フミさんがリビングをのぞき込んで手を振っていた。
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