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五百旗頭さんのところから自宅へ戻る帰り道。
白い息を吐きながら、ポツリと灯る街灯を見上げた。樹さんに、話したいことがあったんだけれど、今日は先客が居て結局言えなかったなぁ。自分の将来のことだから、親にまず言うべきだと思うのだけど、第三者的にはどう思うんだろうって、それが気になって樹さんに聞いてもらいたかったんだ。
自分の体調を思うと、このまま全日制で過ごしていたら、ちゃんと高等学校過程を修めることは難しいのではないかと思う。焦れば焦るほどドツボにハマる自分の性格が、つくづくと嫌になる。あと数か月で2年生は終わってしまう。出席日数的に進級はギリだと言われた。最低ラインの成績はクリアしてるから、補修を入れることで底上げは出来る、と。
ただ、進級したとしてもこの先の進路のことを考えると先行きは暗い。
定時制への編入。
午後になれば体調がいいことを考えると、自分の生活リズム的にはそちらの方が合っているんじゃないか。
最近、そう思い始めた。
通っているのが定時制を併設している高校だから出来ないってことは無いだろう。転籍するなら、試験は来月だ。願書のことを考えると悠長なことはしていられず、年明け直ぐに担任の先生には電話で相談した。定時制は4年制だ。同時期に入学したクラスメートとは一緒に卒業できないし、大学進学を考えているのなら定時制の勉強だけでは難しいかもしれない、と言われた。
クラスメートと言っても、2年生になってから途中で授業に参加して部活もせずに逃げるように帰宅する日々。それも、行ったり行けなかったり……。クラスに友達といえるような人は出来なかった。そもそも、出席日数がギリギリなので推薦での進学は諦めている。仮に大学に進学できたところで、今みたいな調子だったらちゃんと単位が取れるのかも怪しい。
いや、あまり先のことを考えるのはやめよう。今は、自分が納得できる高校生活を送ることが先決だ。いつかは朝から学校へ行ける日が来ると信じて、このまま全日制を貫くか、無理をしない方向で、定時制へ転籍するか。
もう、……自分の中では答えが出ているみたいなものなんだけど。
再び自宅への路を歩き出す。小学校の角を曲がった。
薄暗い道路を横切っていく人影が見えた。
「あ、……えっ?」
見るとはなしに人影を目で追って、ギョッとした。
コートのフードを目深に被った人影は、神社の階段を上がっていった。こんな、冬の夜に何の用事があって神社に行くんだろう。この時間、神社は真っ暗なはずだ。
なんだか、嫌な予感がした。
キョロキョロとあたりを見回す。他に人影はない。ポケットのスマホのバッテリーはまだ大丈夫。予備バッテリーもある。いざとなったら、コイツが懐中電灯代わりになる。
階段の先の暗がりに視線を据えてつばをゴクリと飲み込んだ。
意を決して、足を踏み出した。
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