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そして眠りに落ちた梅子が、夜闇に消えたあの日から、8年が経った。
いまだにあいつからの音沙汰はない。
どこでなにをしている。早く出てこい、梅子。
「――綾木先生!」
放課後になり、職員室を出て数学科の準備室へ向かおうと廊下を歩いていると、生徒のひとりが俺の方へ走ってくる。
俺はあの日から変わらず教師を続けていた。
いっときは憔悴しきっていた時期もあったけれど、この仕事が俺をつなぎ止めてくれたようにも思う。
梅子のようにいじめで苦しむ生徒を無くしたくて、俺は医者になれという親に逆らい教師という職を志した。けれど今ではこの仕事が生きがいだ。
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