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「いらっしゃいませー……あっ」
自転車を飛ばし速攻でバイト先に到着するとタイミング良くレジには坂本怜美がいた。
「どうだ、今日はミスしてないか?」
「はい……」
このおどおどしい態度すらも良い感じに苛立たせる。イカリングを店に入る前に確認した時は50だったが今は52になっていた。1度会話をしただけで回復している。隆幸は初めて坂本怜美の存在に感謝した。
「ちょっと時間まで事務所で休ませもらうから」
「わかりました……」
坂本怜美とペアで働いている間は死ぬことはなさそうだと、ほっと胸を撫でおろした。
事務所に入り15分ほど経った頃。隆幸がイカリングの数値を気にしながらも椅子に座り携帯電話を操作していると、坂本怜美がゆっくりと入ってきた。
(あれ、休憩時間にしては早いな)
「お先に失礼します……」
予想外の言葉に思わず隆幸は椅子から立ち上がる。
「はっ……!? このあとも仕事だろ?」
「用事がありまして……シフトを変えてもらったんです……」
「おまえっ……! ふざけんなよ!」
「え、なんですか……帰りますね」
「待てよ!」
隆幸の呼び止めに応えることなく逃げるように坂本怜美は事務所から出て行った。
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