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「良い物を貸してやろう。まだ実験段階の道具なんだが……これだ! 名前はイカリング!」
老婆の横に置いてあったバッグからブレスレット程度の大きさの半開き状の物が取り出された。隆幸は呆然と老婆を見続けている。
「これは一度装着すると1週間外せないからな。人間の怒りの感情を蓄積し、100がスタートでこれが0になれば死んでしまう。怒りポイントは200まで貯めることができる。ここまでは理解できたか?」
「え、いや……何がなんやら……」
「よし、じゃあ続けるぞ」
隆幸の返事の意味はなかった。
「怒りポイントを貯めると特殊能力が使えるようになる。100ポイント使用で5分間の透視能力、120ポイント使用で5分間の透明人間化、140ポイント使用で5分以内2回分の瞬間移動能力、160ポイント使用で5分間一人に対しての憑依能力、180ポイント使用で5分間の時間停止能力を得ることができる!」
本当にこれらが出来るとすればゲームみたいでとても面白いわけだが、そんな魔法みたいなこと出来るわけがない。これ以上相手をする理由はないので何も言わずそのまま立ち去ろうとしたが、また大声で引き留められた。
「待てい! 本当は一度装着すると1週間外せないが、特別に一度だけ能力を試させてやろう。腕に着けてみろ」
イカリングなる怪しい腕輪のようなものが力強く隆幸の目の前に差し出された。恐る恐る受け取り、上下左右裏返したりしながら観察してみる。手錠のように半開きの状態で、モニターみたいな液晶部分と小さいボタンが一つだけある。それ以外は特に際立って怪しい部分はない。
隆幸は老婆の早く着けろという無言の圧力を感じつつ、左腕に着けて半開きだったものを閉じる。装着完了だ。それと同時に液晶部分に【∞】という表示がされる。思っていたよりサイズがキツく少し圧迫感があるなと感じた。
「よし、着けたな! ちょっと待て!」
老婆はまたバッグからごそごそと何かを探して取り出した。その手の平には小箱が握られていた。
「物が透けるイメージを頭に浮かべながらイカリングのボタンを押せ。そしてこの箱が透けて中身が見えると思い込め」
決して信じたわけではないが、指示された通りにやらないと帰らせてくれる雰囲気ではないので、一応言われた通りに真面目にやることにした。箱に集中し心の中で透けろと念じてみる。
「ほれほれ、どうだ?」
そんな隆幸を見て老婆は箱を小刻みに揺らしたり回転させたりと、からかうような様子を見せた。
そんな老婆は無視し、隆幸は透けるわけないだろうという気持ちと、透けたら楽しいなという気持ちが入り混じる中、やはり箱に何も変化は見られないなと思っていると箱の色が少しずつ薄くなっていることに気付いた。
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