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「ほらほら、透けてきただろ?」
老婆はニヤニヤとした表情を浮かべたまま、相変わらず時折小箱を回転させるなどして遊んでいるかのようだ。
隆幸は返事をすることなく箱を見続けていると、薄く見え始めていた箱の色は気付けばほぼ透明となっていた。そして透明ながらも箱自体の形も薄っすらとは見える。箱の中に入っていた物、指輪も完全に見えた。
「指輪だ……すげぇ……本当に透視能力だ……」
「はい、お試し終わり」
小箱をバッグにしまいながら老婆が言うと、イカリングの液晶の表示が消えた。電源オフの状態にされたようだ。
「どうだ? 1週間やってみたくなったか?」
「やりたい! 是非やらさせて下さい!」
「よかろう! ただし一つ言ってないことがあって、5分で怒りポイントは1減る。能力を使用してもその分減る。そして先程も言った通り数値が0になったら死ぬ」
「ちなみに怒りポイントは結構簡単に貯まるもんなのか?」
「怒りっぽい人が普通に日常を過ごして120ポイント、普通の人なら90ポイント、温厚な人で60ポイントと言われている」
自分はすぐに怒れるだろうかと考えた。瀕死の時でも慌てることなくすぐに回復できるのか。
日常生活を思い出すが、確信する。余裕でいける。いつも通りオンラインゲームをやれば、負けてる時に煽られたりとイライラすることばかりだ。
「問題ない。1週間やらせてくれ」
「では、1週間後のこの時間、またこの場所でな」
イカリングを見ると、液晶に100の数値が表示された。電源が再度入ったのだろう。
「本来は1週間外せないわけだが、もしどうしても外したいと思えば明日の夜なら特別にこの場所に来てやろう」
そんな老婆のセリフには返事をすることなく再度帰路を急いだ。
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