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人魚姫はしくしく泣いていました。
昨日は念願かなって人間の足を手に入れ、タイミングよく王子様に拾われることができました。
だのに、どうしたことでしょう。
昨日はなんともなかった足が、痛くてたまらないのです。
これでは靴をはいて歩くなど、とても無理でした。
(声を失ってさらに、足までもが偽物なんて。ひどいわ、魔女。騙したのね)
人魚姫は海に面した窓まで這っていき、口笛を吹いて魚を集めました。
そして魔女あての手紙を彫り込んだ貝殻を投げました。
(あの嘘つきの、卑怯者の、ペテン師の、老いぼれまで、これをとどけて!)
翌日、窓の下で魚たちがバチャバチャと波を立てています。
魚がくわえた貝殻を、カモメが受け取って人魚姫の手元までとどけてくれました。
それは、魔女からの返事でした。
貝殻にはこう刻まれておりました。
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